家づくりコラム
【注文住宅】吹き抜けをつくると後悔する?よくあるケースと対策法とは
タテの空間を広く取って室内に開放感を出す吹き抜けは、注文住宅で定番ともいえる間取りです。吹き抜けを取り入れる方が多い一方で、実際に暮らしてから後悔するケースも決して少なくありません。マイホームの完成後に後悔しないためには、なぜ吹き抜けが後悔につながるのか原因を知っておきましょう。
この記事では、吹き抜けにありがちな後悔を紹介しつつ、後悔しないための対策と吹き抜けの魅力を解説します。吹き抜けをつくるかどうか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
吹き抜けでよくある後悔
吹き抜けとは、2階や3階の床を部分的になくし、室内をタテにつなげる間取りのことです。まずは、吹き抜けのある家に住んでいる方が、どういった部分に不便を感じているのか、なぜ後悔しがちなのかを知っておきましょう。
空調が効きにくい
吹き抜けに関する後悔で最も多い意見が、空調に関することです。吹き抜けをつくると室内の空間が広くなるため、空調が効きづらくなります。特に寒い時期は、エアコンをつけても暖かい空気が天井のほうに溜まってしまうため、1階部分の生活スペースがなかなか暖まらないことが、後悔する原因の一つとして挙げられます。
吹き抜けのある部屋をしっかり暖めようとすると、エアコンを複数台設置したり、パワーが強力な機種を選んだりしなくてはなりません。そうすると消費電力量が上がり、光熱費もアップしてしまいます。
音やにおいが広がりやすい
吹き抜けがあると、生活音や話し声が筒抜けになってしまったり、においが家中に広がったりすることも後悔につながるポイントです。リビングで音を出すと2階の寝室や子ども部屋まで響くため、「リビングにあるテレビの音がうるさい」「就寝中に物音で起きてしまう」など、ちょっとしたことがストレスになります。特に家族の生活リズムが違う家庭では、不満につながりやすいといえるでしょう。
掃除・メンテナンスが大変
吹き抜け部分は天井が高くなるため、掃除やメンテナンスのハードルが上がります。電球を取り替えたり窓や梁を掃除したりするだけでも、脚立や専用の器具を用意しなくてはなりません。さらに、壁部分のクロスを拭いたり取り替えたりするのにも労力がかかります。高齢になるにつれて掃除やメンテナンスが大変になるので、将来的なメンテナンス性の考慮も必要です。
2階の居住スペースが狭い
吹き抜けをつくると、その分上階部分の床面積が少なくなり、居住スペースが狭くなります。吹き抜けのために2階の部屋数を少なくしたり、収納スペースを削ったりした結果、せっかくのマイホームが手狭になってしまい、後悔するケースがあります。将来的に家族が増える可能性がある場合は、特に重要なポイントとなってくるでしょう。
耐震面が不安に感じる
家の中に壁や柱が少ない吹き抜けの住宅は、耐震性が下がる可能性があります。家族が暮らす家は、地震で崩れなければよいというわけではなく、建物そのものが揺れにくい構造であることも重要です。揺れやすい家では家具が倒れたり、家財が散乱したりしやすく、ケガや火事といった二次被害のリスクが高くなります。非常時に家族の安全を守るためにも、耐震性を確保した設計が必要です。
転落の危険性がある
吹き抜けは、基本的に上階から1階を見下ろせる構造になるため、床がない部分から転落する危険性があります。特に小さな子どもやペットがいる家庭では対策が必要です。また、2階部分からうっかり物を落としてしまうと、下にいる人に当たったり床に傷がついてしまったりすることもあります。思わぬ事故やトラブルは後悔の理由となることが多いため、吹き抜けを設ける際は安全対策が必須だといえるでしょう。
窓の大きさ・配置ミス
窓の大きさや位置が良くないと、後悔の原因になります。窓に関しては「夏に日差しが入りすぎてエアコンをつけても暑い」「開けても風通しが良くない」など、実際に住んでみないとわからないことも少なくありません。加えて、設計した時点では問題がなくても、周囲の環境が変わることで日の入り方や風通しに影響が出ることもあります。また、外観や内観が想像と違っているなど、デザイン的な不満が出るケースもゼロではありません。
吹き抜けのある間取りとは?メリット・デメリットや設計時の注意点について詳しくはこちら
吹き抜けをつくって後悔しないためのポイント
建物が完成してから「吹き抜けをやめておけばよかった」と思っても、間取りを変えることは簡単ではありません。後悔しないよう、事前にできる対策を知っておきましょう。吹き抜けのデメリットをカバーするための工夫を紹介します。
シーリングファンを設置する
吹き抜けのある住宅では、空気の流れを生み出すためにシーリングファンを取り付けるのが一般的です。シーリングファンで空気を循環させることで、冷暖房効率が上がります。また、ゆったりと回転するシーリングファンは、空間にアクセントをつけられるインテリアアイテムとしても人気があります。風量やデザインなどを考慮して選びましょう。
高窓にロールスクリーンやブラインドを設置する
吹き抜けのある住宅では、高い位置から日光を取り入れる目的で高窓を設置することがよくあります。高窓からは日光や冷気が入ってくるため、暑さや寒さへの対策が必要です。外から覗かれる心配がないとしても、ロールスクリーンやブラインドを取り付けておきましょう。電動タイプであればリモコンで開閉でき、室内に差し込む光量を簡単に調節できます。
照明器具の種類や位置を工夫する
照明器具の電球が切れたとき、交換作業をどう行うかについても考えておくようにしましょう。利便性を優先するのであれば、昇降機能付きの照明器具がおすすめです。また、清掃の際は伸縮ワイパーを使う方法もあります。危険な場合は自力で対応するのは避け、専門業者に依頼して作業してもらいましょう。照明を天井に設置してしまうと掃除や電球の取り替えの難易度が上がるため、基本的には壁面に取り付けることをおすすめします。
転落防止対策をする
吹き抜けの設計では、開放感やデザインにこだわりすぎず、安全性を確保することも大切です。部分的に壁にしたり、強化ガラスの腰壁を設けたりなど、家族全員が安心して暮らせる工夫を取り入れましょう。手すりや柵は、支柱の間隔が狭いものを選ぶのがおすすめです。小さな子どもはちょっとしたすき間をすり抜けてしまうことがあるため、特に注意しておきましょう。
耐震性を考慮する
地震大国とも呼ばれる日本で住宅を建てる際は、耐震基準をクリアしなければなりません。吹き抜けの構造でも耐震基準を満たすことはできますが、より強固にしたいのであれば柱や梁を残して耐震性を保ち、あえて見せるデザインにすると、デザイン性も確保できます。現代の日本では、木造でコンクリート造に近い強度の家を建てることも可能です。専門家の意見も取り入れながら、耐震性についてもしっかりと考慮しましょう。
2階の間取りを工夫する
吹き抜けをつくると2階の居住スペースが狭くなるため、2階にどの程度の広さの部屋がいくつ必要なのかを考えましょう。設計の時点で部屋の広さや配置、収納スペースの面積、デッドスペースの有無などを確認し、居住スペースが十分かどうかを検討することが大切です。
設計に関する自由度の高い注文住宅では、2階の面積を確保するためにリビング・ダイニングの一部のみを吹き抜けにすることもできます。また、音の対策として寝室をできる限り吹き抜けから離れた場所に設置したり、壁やドアを防音仕様にするのもおすすめです。
断熱性や気密性を高める
住宅自体の断熱性や気密性を高めれば、年間を通して快適な室内環境をキープできます。冷暖房効率も良くなるため、電気代が抑えられるのもメリットです。具体的な対策としては、壁や天井に断熱材を入れる、気密性に優れた樹脂製サッシを採用するといった選択肢があります。初期コストはかかりますが、ランニングコストを安くできるうえ、生活の質も高められます。
吹き抜けの魅力
吹き抜けは見た目がおしゃれで期待値が高い分、「期待したほど良いものではなかった」と思うこともあるでしょう。一方で「吹き抜けをつくってよかった」というケースも多数あります。以下では吹き抜けの魅力について解説していきます。
開放感がある
吹き抜けの最大の魅力は、リビングやダイニングを広く感じられることです。高窓から差し込む日差しを感じたり、天井を見上げたりすれば、心地良い開放感を得られるでしょう。タテの空間を活かすことができるため、十分な敷地面積を確保できない狭小住宅にもぴったりです。
吹き抜けリビングの注文住宅!デメリット解消法やおしゃれな間取りとはについて詳しくはこちら
明るく風通しが良い
吹き抜けに天窓や高窓を設置すれば効率的に自然光を取り入れることができ、部屋全体が明るくなります。電気を点ける時間を少なくできれば、電気代を節約することも可能です。また、高い位置と低い位置にそれぞれ窓を設置できるため、風の通り道を確保しやすく、通気性もアップします。
おしゃれでデザイン性が高い
吹き抜けは視覚的に広く感じるだけでなく、天井の高さを生かした内装やインテリアにできる点も魅力です。吹き抜けに合わせてリビング階段をつくったり、庭とリビングが一体化するような大きな窓やウッドデッキを取り入れたりすることで、おしゃれな雰囲気をつくりやすくなっています。吹き抜けを取り入れる際は間取りや設備にもこだわり、個性を演出しましょう。
家族のコミュニケーションがとりやすい
吹き抜け部分で1階と2階がつながっているため、別々のフロアにいても家族の様子を伺いやすく、コミュニケーションがとりやすくなります。会話するためだけに、わざわざ階段を上り下りする必要がありません。また、音や声が響きやすい傾向にあるため、家族の気配を自然と感じられて安心です。
後悔しない対策をして吹き抜けの魅力を引き伸ばそう
上下のフロアをつないで一つの空間にする吹き抜けは、掃除やメンテナンスが大変だったり、冷暖房が効きづらかったりすることが後悔の理由になりがちです。その一方で、たくさんのメリットを享受できるため、後悔しやすい点を把握してしっかり対策をとるようにしましょう。
キノエデザインでは、これまでに吹き抜けの魅力を感じられる注文住宅を数多く手がけてきました。吹き抜けをつくるべきか悩んでいる方や、後悔しないための工夫を詳しく知りたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。
吹き抜けのよくある後悔に関するよくある質問
吹き抜けは部屋数が減りますか?
吹き抜けを設けることで、その分のスペースが確保できなくなるため、理論的には部屋数が減る可能性があります。
しかし、吹き抜けは開放感を出すためや、自然光を取り入れるために設けられることが多く、住宅全体の快適性や機能性を高める役割を果たします。
そのため、部屋数が減るというデメリットを上回るメリットがあると考えられます。また、設計次第で吹き抜けスペースを有効活用することも可能です。例えば、ロフトスペースとして利用したり、2階部分を部屋として設けるなどの工夫が可能です。
吹き抜けの家は良くない?
吹き抜けの家には、以下のようなメリットとデメリットがあります。
【メリット】
- 開放感:吹き抜けがあることで、部屋全体が広く感じられ、開放感があります。
- 明るさ:天井が高いため、自然光がたくさん入り、部屋全体が明るくなります。
- 換気効果:上部に空間があるため、自然の風を取り入れやすく、換気効果が高まります。
【デメリット】
- 冷暖房費:天井が高いと冷暖房の効率が下がり、エネルギー消費が増える可能性があります。
- 音響効果:音が響きやすく、プライバシーの観点から問題になることもあります。
- 清掃の手間:天井が高いと、掃除が大変になる可能性があります。
これらのメリットとデメリットを考慮し、自分のライフスタイルや家族構成、予算などに合わせて最適な選択をすることが重要です。
吹き抜けは何のためにあるのですか?
吹き抜けは、主に以下の3つの目的で設けられます。
- 明るさと開放感の演出: 吹き抜けは天井が高く、自然光がたっぷりと入るため、室内を明るく広々と見せる効果があります。また、視覚的に広がりを感じさせることで、開放感を演出します。
- 空気の流れの改善: 吹き抜けは上下の空気の流れを良くするため、換気効果が高まります。これにより、室内の温度調節や湿度のコントロールが容易になります。
- 音の響きの調整: 吹き抜けの空間は音がよく響くため、音楽を楽しむ空間として利用することもあります。また、家族の声が響き渡ることで、コミュニケーションを促進する効果もあります。
ただし、吹き抜けは冷暖房の効率を下げる可能性もあるため、設計時には適切な断熱対策や空調設備の選定が必要です。