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2022.04.01 家の造り

高機密・高断熱の住宅のメリット・デメリット、建てる際に役立つ制度

お家づくりをスタートすると急に目につくようになる「高気密・高断熱」という言葉。
どこのハウスメーカーや工務店にいっても、断熱性能などの話をされるから重要な部分であることはわかるけれど、そもそも高気密・高断熱住宅って、どんなお家なのでしょうか?
本ページでは、お家づくりを考え始めたばかりの方に向けて、高気密高断熱住宅ってそもそも何なのかについてお伝えしていきたいと思います。

高気密・高断熱の家とは?

ここ20年ほどでよく耳にするようになった「高気密・高断熱の家」。
そもそも、高気密や高断熱とはどういった状態のことを言うのでしょうか?
まずは、高気密や高断熱というそれぞれの意味についてお伝えしていきたいと思います。

高気密な住宅とは?

気密性能が良い(高気密)ということは、住宅の性能を示す用語では「C値」という名称で表現され、家の隙間が少ないことを意味しています。
ご実家などで築年数が経っている住宅に住んだことがある方は体感しているかもしれない「隙間風」も最近のお家ではほとんど発生しません。
これも、住宅の高性能化に伴って、快適性が増したことの1つです。

では、どうやって気密性を高めているのでしょうか?
住宅建築時の隙間をなるべく埋めることが必要となるため、制度の高い建築部材や防湿シート、断熱材、気密テープなどを用いて、隙間がなるべく発生しないように施工していきます。
C値とは、そうした施工を施した後に、専用の機械を用いて測定した数値のことを言います。

高断熱な住宅とは?

断熱性能が良い(高断熱)ということは、住宅の性能を示す用語では「UA値」という名称で表現され、家の壁やサッシ(窓)から熱が逃げにくい家であることを意味しています。
例えば、築年数が古い、昔のお家では、窓には「ガラス1枚」、「サッシはアルミなどの金属製」というものが一般的に使われていました。
しかし、ガラス1枚だけや金属製のサッシでは熱伝導率が高く、熱が伝わりやすいため、冬場には家全体の窓が結露してしまったり、窓辺だけ床が冷たくなるほど冷気が入ってきたりしてしまいます。
そうした環境下では、いかに気密性能を高め、外の空気が家の中に入ってこないようにしたところで、エアコンなどで暖かくした室内に窓や壁を伝って冷気が入ってきてしまい、省エネ性能が損なわれてしまったり、結露が原因でカビが発生して、室内環境が悪くなってしまうことも考えられます。
こうした状況を防ぐために、外壁と内壁の間に断熱材を挟む「外張り断熱」や、壁の中にも断熱材を充填する「W断熱」、サッシが樹脂製の窓やトリプルガラスの窓など、断熱性能を高めることで、家の中の熱が外に逃げることを防いだ家を高断熱住宅といいます。

高気密・高断熱住宅のメリット・デメリット

今、家づくりを考え始めるとどのメーカーも当たり前のように「高気密・高断熱です!」と言いますが、実は高気密・高断熱の住宅にはデメリットもあるんです。
ここでは、高気密高断熱住宅のメリット・デメリットを整理して紹介したいと思います。

メリット1:省エネ効果が高い

前述のように、隙間をなるべくなくすように施工するため、外の空気が家の中に入ってきにくいため、外気の影響を受けづらく、冷房や暖房が効きやすくなることで光熱費の節約効果があります。
また、一定の省エネ性能を有することで「子ども未来住宅支援事業」などの補助金や税制優遇などを受けられることがあります。(※制度は時期によって異なります)

メリット2:ヒートショックの予防になる

高気密高断熱住宅にすることで、外気温の影響による部屋ごとの急激な暑さや寒さなどの温度差を抑制することができるため、温度差が原因によって起こるヒートショックなどの発生可能性を減らすことができます。ただし、部屋ごとの寒暖差は間取りにも影響するため、なるべく間仕切りにない間取りや凹凸の少ない間取りにすることで、より寒暖差をなくすことができます。

デメリット1:換気、結露、カビに注意が必要

高気密高断熱住宅には、気密性能が高いが故に暮らし方に制限がかかったり、素材や商品の選び方が非常に重要になったりすることがあります。
例えば、暮らし方の制限という点でいうと、“暖房器具選び”に制約が出ることがあります。
具体的には、開放型石油ストーブは、気密性能が高い家では室内の二酸化炭素濃度が上がってしまうため、使用しないことを推奨しています。
(※使用する場合には、常時換気する必要があるなどの制約があることがあります)
そのため、FF式のファンヒーターや遠赤外線を発するタイプのものなどを採用いただく必要があります。

また、気密性能が高いがゆえに、室内で発生した湿気がこもりやすい点もデメリットです。
そこで、湿気がこもりやすいことで発生するカビなどを抑制するためにも、換気システムの選び方も大切になってきます。
多くのハウスメーカーで標準採用されている3種換気だと、気密性能を高くしても、24時間換気のために給気口や排気口付近から外気が出入りしてしまいます。
そのため、熱交換機能がついた1種換気にすることで、湿気対策も兼ねることができるのですが、オプション費用が発生することもあります。
(全館空調を導入検討している方は、1種換気と高気密高断熱住宅にすることは必須とお考えいただくのが良いです)

このように気密性能が高いことにより、室内の空気がこもりがちになり、湿潤状態になってしまったり、逆に乾燥しすぎてしまうことが高気密高断熱住宅のデメリットの1つ目ですが、上述のように換気システムをグレードアップしたり、壁材に調湿性能や抗菌・抗ウイルス作用のある漆喰壁などを採用することで、デメリットを軽減することができます。

デメリットを軽減できる漆喰についてはコチラ

デメリット2: 建設コストがかかる

高気密高断熱住宅の2つ目のデメリットは、「建築コスト」です。
一般住宅と比較して、断熱性能を高くする必要があるため、断熱材やサッシ(窓)、建具(ドア)などを性能が高いものを採用しなければなりません。
そうした部材のグレードアップという点で、その会社の標準仕様の内容によっては、オプション品を採用する必要があるため、建設コストが高くなることがあります。
また、高気密高断熱住宅から更に性能を上げて、長期優良住宅やZEH住宅を実現しようとすると、さらなる性能の向上や発電・蓄電設備の導入などが必要になるため、更に建設コストがアップする可能性があります。

高機密・高断熱の住宅を建てる際のポイント

暮らしの快適さだけではなく、補助金や税制面など色々な面でメリットのある高気密高断熱住宅ですが、実現するためには何に気をつける必要があるのでしょうか?
メーカーさんに任せきりで思ったよりも快適ではない環境になってしまった、ということを避けるためにも、最低限気にする必要があるポイントをご紹介していきます。

窓を高気密・高断熱仕様にする

家の中の熱の48%は窓などの開口部から逃げていくと言われています。
そのため、窓のサッシ枠をアルミ製ではなくアルミ樹脂の複合サッシに変更したり、両面とも樹脂サッシのもに変更する。
ないしは、ペアガラス(複層ガラス)のものやトリプルガラスのもの、アルゴンガスなどを注入して熱伝導率を下げたものを採用することで、大きな効果を望むことができます。
また、リフォームで窓まわりを改善する場合には、既存のサッシ(窓)の内側に新たにサッシを設置する二重サッシにすることも大きな効果をのぞめる手段の1つです。

断熱工法は「外断熱」と「内断熱」の2種類を用いる

住宅の断熱材の施工方法には「外張り断熱」と「内断熱」の2種類があります。
手軽に断熱材の効果をあげようとするならば、この2つの断熱工法を組み合わせた「W断熱」を取り入れることがおすすめです。
ただし、断熱材の厚みが増す分、壁の厚みも増してしまう点や単純計算でも断熱材を2種類分取り入れる必要があるので、コストアップは避けられません。
内断熱単独で断熱性能を上げる場合には、断熱材の素材にこだわって選ぶことで、断熱性能を高めることができる可能性があります。
例えば、多くのハウスメーカーが標準品に採用しているグラスウール1つとっても、その密度によって性能も価格も変わりますので、自分たちの家づくりに採用される予定になっている断熱材は何なのか、しっかりと確認することをおすすめします。

庇や軒を作り日差しを遮る

ここまで、家の中の熱が外に逃げにくくするための部分についてご紹介してまいりました。
それでは、逆に外の熱気などが入ってくるのを遮る方法はないのか、というと庇や軒を作ることで夏場の熱気は軽減することができます。
軒ゼロのクールなデザインのお家も素敵ですが、性能面を考えると軒をつくって日差しがダイレクトに窓に当たることを防ぐことはとても効果的です。
また、軒や庇があることで雨天には雨が窓に直接あたることを防げるため、防音という観点でも効果を発揮してくれます。

複雑な間取りは避ける

前述でも少し記載していますが、凹凸のある複雑な間取りは、部屋ごとの寒暖差を減らしたいという目的で高気密高断熱住宅を希望する場合には避ける必要があります。
間取りが複雑になると、その分壁や建具などの間仕切りが増えてしまい、各部屋の空気の流れが悪くなってしまうためです。
そのため、冷暖房の効率も悪化してしまうことも懸念されます。
そういった事態を避けるためにも、高気密住宅だからこそ換気計画はしっかりと組んで貰う必要があります。

自然素材を用いる

高気密住宅は、湿気の逃げ場がなく、家の中が湿潤状態になってしまったり、逆に乾燥しすぎてしまうことがあります。
そういった高気密が故のデメリットをカバーしてくれる素材を用いることで、長所をより生かした快適な室内環境を実現することができます。
例えば、室内で発生した湿気は、調湿機能や消臭性、防カビ効果のある珪藻土や漆喰でカバーするというのも手段の1つです。
また、断熱材に自然素材の炭化コルクやセルロースファイバーを利用することで壁の調湿性能を高めることができたり、シックハウス症候群を引き起こす有害物質が含まれていないなど自然素材の特徴を高気密住宅と掛け合わせることでより快適な自宅を実現することができます。

高気密・高断熱住宅を建てる際に役立つ制度

注文住宅を考えたときに、「少しでもオトクに建てたい」と考えるのは、皆さん共感できるポイントではないでしょうか?
この章では、高気密高断熱な省エネ住宅にするメリットを、税金面や融資面、補助金などの側面から見ていきたいと思います。

改正建築物省エネ法の活用

住宅に関する補助制度の多くには、「省エネ基準を満たした場合」などのように「省エネ基準」という単語がよく出てきます。
まずは、そもそもこの「省エネ基準」とはどういった基準なのかからご紹介します。

日本の住宅の省エネ基準は、令和元年5月17日に公布された、改正建築物省エネ法によって計算方法が定められています。
この改正省エネ法は、パリ協定を踏まえた地球温暖化対策の一環として、温室効果ガスの削減目標を達成するために制定されました。
改正前までは、一般の戸建住宅は対象ではなかったのですが、今回の改正で一般の戸建住宅に関しても建築士から省エネ基準への適否などの説明が必要になり、住宅業界全体として省エネ基準を意識する必要がでてきました。
では、その省エネ基準とは具体的にどういった基準なのでしょうか?

省エネ基準とは、建築物が備えるべき省エネ性能の確保のために必要な建築物の構造及び設備に関する基準であり、一次エネルギー消費量基準と外皮基準から定められています。
一次エネルギー消費量とは、冷暖房や家電類などの建物の利用に伴って発生する“直接的”なエネルギーの消費量のことをいい、この数字が小さいほど省エネであることを示しています。
具体的な計算方法は国土交通大臣が定めることとされていますが、上述のようにその建物を利用するにあたって、1年間で発生する直接的なエネルギーの消費量が省エネ基準で定めた基準値を下回っているかどうかで判断します。
外皮性能基準は、「外皮平均熱貫流率(UA値)」と「平均日射熱取得率」という2つの基準で構成されています。
外皮平均熱貫流率とは俗に言う「UA値」のことで、家の中から床や外壁、屋根や窓(開口部)などを通過して外に逃げる熱量の合計を、家の中と外の境界になっている部分(外皮)で平均した値のことを言います。
平均日射熱取得率とは、太陽光(日射)からの熱がどれだけ侵入してきやすいかを示した値で、数値が大きいほど日射熱が侵入しやすいことを示しています。
このような基準をクリアした住宅であれば、省エネ性能が十分にあるであろう、ということで下記のような補助制度で一般住宅よりも優遇を受けられるようになります。

補助金・給付金支援

1)ZEH(ネット・ゼロエネルギー・ハウス)支援事業

ZEH住宅という言葉自体は、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
ZEHとは、快適な室内環境を保ちながら、住宅の高断熱化と高効率設備によりできる限りの省エネルギーに努め、太陽光発電等によりエネルギーを創ることで、1年間で消費する住宅のエネルギー量が正味(ネット)で概ねゼロ以下となる住宅のことを差します。
ここまでご紹介していたような省エネ性能を満たしただけではなく、それに加えて太陽光発電などの創エネ設備を導入することで、自給自足で暮らしのためのエネルギーを補える住宅ですので、その分コストも掛かかるため、補助を受けることができます。
具体的には、ZEHビルダーとして登録した住宅会社にて、ZEH基準を満たした住宅を建築することで「60万円」の補助を、基準を満たした家に、更に「蓄電システム」などを追加で設置することで合計で最大「105万円」の補助を受けることができます。

2)LCCM住宅(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス住宅)

ライフ・サイクル・カーボン・マイナス住宅とは、長期的に使用できる家(長寿命)であることに加え、更に一層のCO2削減を目標とした住宅です。
具体的には、住宅の建設時から居住時、廃棄(解体)に至るまでの一生涯、つまり住宅のライフサイクル全体を通した合計でCO2の修正をマイナスにする住宅のことを言います。
上記の目標を実現することができる(サステナブル)と国から認められた場合に、導入補助金として190万円を得ることができます。(その他工事時期などの条件もあり)

3)地域型住宅グリーン化事業(高度省エネ型)

地域型住宅グリーン化事業は、国土交通省の採択を受けた地域の中小工務店のグループの下で行われる省エネ性能に優れた木造住宅の新築に対して支給される補助金です。
補助率は、一般受託から基準を超えるために必要になった費用の2分の1で、限度額は「ZEH:140万円/戸」、「低炭素認定住宅:110万円/戸」です。
また、会社の規模なども条件に指定されていますので、ハウスメーカー選びをしている段階から、この補助を受けることができる会社なのかを確認していく必要があります。

金融支援

融資の面では、フラット35に最もわかりやすい優遇があります。
内容としては、通常の住宅では、新築から”5年間”、適用金利から-0.25%となるのが一般的なところ、省エネ基準をクリアした住宅であれば、優遇期間が倍の”10年間”に延長となります。

減税制度

住宅ローン減税の制度においては、最も省エネ基準をクリアしているかが大きく影響します。
これまでは、住宅性能が一般的な家であっても住宅ローン減税の対象となっていましたが、2021年末に発表された閣議決定では、下記のように変更されることになっています。
また、固定資産税において半額分が5年間の優遇や、登録免許税の税率も0.4%から0.1%に優遇されるなど、住宅取得時にかかる費用を削減することができます。

「住宅・建築物の省エネ化に関する支援制度|国土交通省」

省エネ性能だけに着目しすぎないことが大切

ここまで、高気密高断熱なお家をテーマに気密性や断熱性について、そして高気密高断熱にすることのメリット・デメリットをご紹介してきました。
住んでからの暮らしも快適になり、様々な面での補助制度もある省エネ住宅ですが、気密性能や断熱性能だけに囚われて、そこだけを追求してしまうと間取りに制限がでてしまうこともあるので、立ち止まりながら、ご自身たちがしたかった家を実現できるようにおうちづくりを進めてください。
その上で、高気密高断熱な省エネ住宅を実現するときには、自然素材を要所に取り入れるなどして、高気密であることのデメリットを打ち消しながら、快適で安心して暮らせる住まいを実現してくださいね。

高気密高断熱×自然素材のお家づくりに興味がある方は、ぜひ秋山住研のホームページもご覧になってみてください。