家づくりコラム
耐震等級とは?基礎知識を押さえて地震に強い家をつくる方法
目次
日本は古来から地震が多い国です。21世紀に入ってからも数年ごとに大きな地震が発生していることから、住宅の耐震等級という言葉を度々見聞きするようになりました。しかし、実際は「耐震等級という言葉を聞いたことがあるが、詳しい内容を知らない」「家づくりをする際に、どのように耐震等級を決めれば良いのかわからない」といった疑問や悩みを抱える方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、耐震等級に関する基礎知識についてご紹介します。地震に強い家づくりをしたい方や、家族の安心・安全のために耐震等級について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
耐震等級とは
家を購入する際や地震関連の報道などで目にする「耐震等級」とは、地震に対する建物の強度を示す指標のことです。「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づいた、住宅性能表示制度の評価項目でもあります。
耐震等級は建物の耐震性能によって3つのランクがあり、数字が大きいほど耐震性能が高くなります。新しく住宅を建てるときや、すでに建っている住宅を購入するときの目安にすると良いでしょう。
耐震等級の区分
耐震等級のランクは3段階に分けられ、等級が高いほど地震発生時に建物が崩壊・倒壊しにくく、リスクが低いといえます。まずは、等級ごとの耐震性能基準について確認しておきましょう。
耐震等級1
耐震等級1は、建築基準法で決まっている耐震性能の最低基準です。現在の建築基準法に従って建てられた住宅であれば、耐震等級1を満たしています。耐震等級1の強度は、震度6強から7に相当する数百年に一度程度の地震で倒壊せず、震度5強の地震で損傷が発生しない程度となっています。
参考までに、2011年3月の東日本大震災や2016年4月に発生した熊本地震、2024年1月に起こった能登半島地震の最大震度はいずれも「7」です。
耐震等級2
耐震等級2は、耐震等級1の1.25倍の強度があることを示しています。震度6強から7に相当する数百年に一度程度の地震が起こった際も、補修をすれば住み続けられる強度だといえるでしょう。地震などの災害時に避難所として使用される学校や病院などの公共施設は、耐震等級2以上の強度が必要です。
耐震等級3
最も高い基準である耐震等級3は、耐震等級1の1.5倍の強度があることを示しています。災害発生時に救護活動の拠点となる消防署や警察署などは、耐震等級3を満たす強度で建設されます。震度6強から7に相当する地震が起こった場合もほぼ損壊せず、軽い補修だけで済む強度があるといえるでしょう。
実際に最大震度7を二度観測した熊本地震では、耐震等級3の住宅は大きな損傷がなく、ほとんどが被害を受けずに済んだことがわかっています。
耐震等級を高める4つの要素
地震の揺れによって住宅が倒壊すれば、生活の拠点を失うだけでなく家族の生命も脅かされかねません。万が一に備えて「できるだけ耐震性の高い住宅に住みたい」と考える方は多いのではないでしょうか。ここでは、耐震等級を高める4つの要素について解説します。
建物の重さ
建物の重量を軽くすることで耐震性を高められます。木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造といった構造によって変化する建物の重量は、日常生活を送るうえでは意識しない部分かもしれません。
しかし、建物が重くなるほど地震の揺れによって受ける衝撃が大きくなり、反対に軽くなるほど地震による影響を受けにくくなるため、耐震性を考えるうえで重要なポイントとなります。耐震性アップのために建物全体の重量を軽くするには、軽量の屋根材や外壁材を使用することが効果的です。
耐力壁の数
耐力壁とは、主に平行方向からかかる力を支えるための壁のことです。建物は垂直方向にかかる力であれば柱で支えられるものの、地震の横揺れや強風といった水平方向からかかる力には弱いという性質があります。地震から建物を守るには、横揺れへの対策が必須だといえるでしょう。
地震の横揺れに耐えられるようにするには、筋交いを入れたり、構造用合板を張ったりして水平方向の強度を上げることが重要です。耐力壁が多いほど耐震性が高まり、地震による倒壊リスクを減らすことにつながります。
耐力壁の配置
前述のとおり、耐力壁の数が多いほど耐震性が高まりますが、ただ数が多ければ良いというわけではなく、バランス良く配置することも重要です。偏った配置にしてしまうと、揺れによってねじれが生まれやすくなり、耐震性を下げてしまう原因にもなりかねません。
効率良く地震から受ける力を分散するには、1階と2階の耐力壁の位置を揃えるなど、家全体の耐震性を考慮したうえで配置しましょう。
床の耐震性
床の耐震性も重要なポイントです。生活の場である床には、建物の重さを支えたり、水平方向からかかる力を支えたりする役割もあります。どのような建物でも壁と床はつながっているため、壁の強度を高めても床が貧弱では地震の揺れに耐えられません。床の耐震性が高ければ耐力壁が受けた揺れを受け流すことができ、建物へのダメージを抑えられます。
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耐震等級について知っておきたいポイント
耐震等級が安全な暮らしにどのように影響するかがわかれば、住宅を建てるときや購入するときに適切な選択ができるようになります。以下で紹介する耐震等級に関するポイントを押さえておきましょう。
耐震等級の取得は必須ではない
耐震等級を含む住宅性能表示制度は任意の制度であり、すべての住宅で性能表示がされているわけではありません。むしろ、2000年以前に建てられた建物は、住宅性能表示制度の評価書を取得していないケースがほとんどです。
改めて耐震等級の認定を受けたい場合は、登録住宅性能評価機関に評価書の作成を依頼する必要があります。また、1981年6月1日以降に建築された新耐震基準の建物であれば、耐震等級1を満たしていると考えて差し支えありません。
建築時の耐震等級は自分で選べる
注文住宅を建てる場合は、施主が希望する耐震等級を設定できます。設計の段階で住みやすさや予算、間取りなどを考慮しつつ、耐震等級についても相談することをおすすめします。
ただし、耐震等級を上げるには柱や壁の位置などに制限がかかり、間取りの自由度が低くなる点には注意が必要です。施主がこだわる間取りを優先する場合は、あえて耐震等級を上げないケースもあります。いずれのケースでも、知識を持っておくことで選択肢が広がります。建ててから後悔しないよう、幅広く情報を収集しておきましょう。
耐震等級によって地震保険料の割引を受けられる
耐震等級を取得することで、地震保険料の割引が受けられる点も見逃せないポイントです。割引率は等級によって異なり、耐震等級3では50%、耐震等級2では30%、耐震等級1では10%となっています。
地震大国である日本では、地震保険に加入して万が一に備えることも重要です。ただし地震保険単独では契約できず、火災保険とセットで加入することになるため、手続きなどに関しては保険会社に確認しましょう。割引を受けるには、耐震等級を証明した書類の提出が必要です。
耐震・制震・免震の違い
建物を地震の被害から守るための方法は、「耐震」のほかにも「制震」や「免震」があります。それぞれの違いについて以下で解説していきます。
耐震
耐震とは、建物そのものの強度を上げて地震の揺れに耐える構造のことです。耐力壁を設置したり、柱と梁の接続部を強固にしたりして、揺れても壊れない建物にします。一般的な住宅やオフィスビルなどに取り入れられる構造であり、家づくりをするうえでも意識すべきポイントだといえるでしょう。耐震基準は建築基準法によって定められています。
制震
制震とは、地震の揺れを吸収する構造のことです。建築する際にダンパーなどの制振装置を設置し、地震が発生した際は揺れを吸収しながら揺れ幅を最小限にとどめ、建物へのダメージを減らします。タワーマンションや高層ビルなど、高層建築物における上階の揺れを抑えられるのが特徴です。また、強風や台風などによる揺れも軽減できます。
免震
免震とは、地震の揺れが建物にできるだけ伝わらないようにする構造のことです。基礎と建物の間にローラーなどの免震装置を設置し、地面と建物を切り離すことで、地震の揺れを建物に伝えないようにします。耐震や制震と比較すると揺れにくくダメージも抑えられるため、建物の中にいる人の安全度を高めることができます。ただし施工費用は高めです。
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地震の周波数
地震が起きたとき、最初は小刻みにガタガタと縦に揺れ、その後ゆっくりと横に揺れるという体験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。これは、地震波には早く伝わるP波(縦揺れ)と、P波よりも遅いS波(横揺れ)があるからです。建物は横揺れに弱く、耐震等級3だけでは遅い地震に耐えられないことがあります。
本当に地震に強い家を建てたいのであれば、耐震等級3に加えて、地震の揺れを吸収する制震装置を取り入れましょう。詳しく知りたい方は、キノエデザインまでご相談ください。
耐震等級の知識を深めて家族を守るための家づくりを
地震が多い日本で家を建てるには、地震に対する対策が必須だといえます。大切な家族と自宅を災害から守るためには、耐震に関する知識を深めることが大切です。地震に強い構造を知りたい方や、大地震にも耐えられる家を建てたいとお考えの方は、キノエデザインにお問い合わせください。豊富な実績とノウハウをもとに、耐震性に優れた家づくりを実現します。
耐震等級に関するよくある質問
耐震等級の最高ランクはいくつですか?
耐震等級の最高ランクは「耐震等級3」です。
この等級は、建築基準法で定められた耐震性能を大幅に上回るレベルを指し、非常に高い耐震性能を持つ建物であることを示しています。
耐震等級3の建物は、大規模な地震が発生しても倒壊や大きな損傷のリスクが非常に低く、安全性が非常に高いと評価されています。