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2022.01.31 家の素材

漆喰のメリット・デメリットまとめ!特徴と注意点は?

注文住宅でのお家づくりを進めていく中で、InstagramなどのSNSツールを活用される方が増えてきた昨今。
実際に建てられる方で、Instagramを参考にされることが多いポイントの1つが、お部屋の雰囲気を決める内装材の仕上がりのイメージ確認ではないでしょうか?
たくさんの色がある壁紙(クロス)をはじめ、エコカラットなどの建材、そして、珪藻土や漆喰などの自然素材系の塗り壁まで。
多数ある選択肢を見る中で、それぞれの建材にどのような特徴があるのか、分からなくなってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回は、そんな内装の仕上材の中でも「漆喰」についてご紹介していければと思います。

 

漆喰について

自然素材って何が良いのか具体的には分からないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
戸建住宅の建築を検討する中で、内装の仕上げ材として「いいもの」と漠然と認識されていることが多い漆喰ですが、まずは、そもそも漆喰とはなんなのかをみていきたいと思います。

漆喰とは?

漆喰の塗り壁

漆喰とは、消石灰(水酸化カルシウム)を主な原料とした塗り壁材です。
この主な原料になっている消石灰(水酸化カルシウム)とは、石灰石を焼いて水を加えたもののことを言います。石灰石は、サンゴ礁や貝殻などの屍骸が長い年月をかけて堆積・石化したものが、地殻変動などによって隆起して、陸地になったところから採取することができる鉱石です。
そのように採取された石灰石をベースに、糊(ノリ)やスサなどのつなぎ材を加え、水で練ったものを漆喰といいます。

日本で古くから使われてきた漆喰ですが、実は日本発祥の材料ではなく、世界各地で使われてきた材料なんです。
例えば、ギリシャのサントリーニ島の美しい町並みにも漆喰が使われています。

漆喰塗りの海外の建物 〜サントリーニ島〜

日本では寺社仏閣やお城をはじめとした、何百年も雨風にさらされている建物の外装材にも使用されてきました。その高い耐久性という特徴により、メンテナンスを定期的にすることで、今でもその美しさをキープしています。

漆喰塗りの外壁 〜姫路城〜

漆喰の歴史

そんな世界各地で使われている漆喰ですが、いつ頃から使われるようになった素材なのでしょうか?
日本での漆喰塗りの歴史は約1,300年前(西暦700年頃)と言われていますが、実は、漆喰の歴史はもっと古いものです。
例えば、古代ギリシャやローマ時代には、絵の具を染み込ませて“壁を装飾するための素材”として使われていたことがいくつかの神殿や遺跡から判明しています。
また、約5,000年前のエジプトでは、ピラミッドを形作り石と石をくっつける“接着剤”として使用されていました。

漆喰が接着剤に用いられたピラミッド

このように様々な用途でつかわれてきた漆喰ですが、日本には中国を経由して西暦700年頃の飛鳥時代に伝わってきたと言われています。
エジプトから中央アジアを経由して中国に伝わった漆喰は、当初、ピラミッドと同じようにレンガの接着材として使用されていたようです。
中国で使われる中で、漆喰の原料である石灰のもつ強アルカリ性という特徴から抗菌効果を期待して住宅の室内に塗ったり、糊として米粉や膠(にかわ)、スサの代わりに動物の毛を加えるなどした現在の漆喰の原型となるものが完成しました。
その後、中国からシルクロードを渡って、日本に伝わった漆喰ですが、中国よりも地震が頻発する日本では、中国から伝来した漆喰そのままでは壁材として適さないことがわかりました。
そこで、海藻を煮詰めて作った糊(海藻糊)や麻スサなどを加え、揺れへの耐久性を高めた現在の漆喰に近いものが作られました。そうした素材の改良を経て、日本の環境下に適した改良型の漆喰ができたことにより、寺社仏閣や城・武家屋敷などに広く使われ、高級建材としての地位を確立したと言われています。

漆喰のメリット

漆喰を高級建材たらしめた特徴は、今の日本の住宅においてどのようなメリットがあるのでしょうか。
漆喰のもつ特徴からメリットになる点をみていきたいと思います。

時間が経っても劣化が少ない

漆喰を語る上でまず外すことができないのが、その耐久性です。漆喰は基本的にはメンテナンスが不要であり、その耐用年数は100年とも言われています。
「平成の大改修」と呼ばれた大規模な漆喰の塗替えがされた、兵庫県の姫路城においても、雨風にさらされつづける外壁でありながら、塗替えは約50年に1度で済んでいるということからもその耐久性の高さが伺えます。

一般住宅の内装においても、メンテナンス性と耐久性が発揮されるので、一般的な壁紙と比較すると時間の経過に伴う劣化は少ないと言えるでしょう。
また、漆喰は天然素材である消石灰を原料にしているため、樹脂が原料になっている通常の壁紙(ビニールクロス)と異なり、静電気を溜め込むことがありません。そのため、室内にあるホコリや細かなゴミなどが付着しにくく、掃除の手間が減るという意味でもメンテナンス性に優れた素材だと言えます。

調湿性能に優れている

漆喰は別名「呼吸する壁」とも呼ばれています。なぜ、「呼吸する」といわれているかというと、漆喰の“多孔質”な構造のためです。
多孔質とは、細かい穴が空いた構造になっていることを言います。

多孔質構造のイラスト

 

この構造のために、室内の仕上げ材として使われた漆喰は、家の中の湿度が高い場合にはその湿度を吸収し、逆に家の中の湿度が低くなってきたときには、吸着していた湿度を放出することで、家の中の湿度を一定に保つ働きをしてくれます。
室内の湿度を適切に保つことで、カビやダニの発生を抑制することができるので、安心して暮らせる環境を作ってくれる漆喰は、俗にいう「健康住宅」でよく使われる建材の1つです。

耐火性に優れている

昔の日本では、漆喰は城や寺社仏閣、武家屋敷などによく使われていましたが、それはなぜでしょうか?
実は、「火事に強い」からなのです。
漆喰の原材料は、“消石灰”、つまり炭酸カルシウムという無機質で不燃性の物質が主成分になっています。
そのため、漆喰をバーナーなどで燃やしても、表面が焦げることはあってもなかなか内部の壁などが燃えることまで至らない、という点が評価され、お城や寺社仏閣などで使用されてきたと言われています。
この耐火性は、一般住宅に使用する際にも大きなメリットとなります。
通常の壁紙の多くは樹脂が原料となっているため、火事などによって燃えた際に有害物質(有毒ガス)を発生させてしまいます。
しかし、漆喰は無機質な物質であるため、仮に燃えてしまったとしても有毒ガスの放出量が少なく、万が一の有事の際に家族を守る一助になってくれるかもしれません。

抗菌性がある

漆喰の特徴として、「調湿性」の次によく聞くのが「抗菌性」ではないでしょうか?
漆喰の原材料である消石灰の強アルカリ性という特徴によっては、漆喰には付着した菌やウイルスを不活性化するという効果があります。

抗ウイルス作用のメカニズム

この効果は、住宅の内装の仕上げ材として使った漆喰にも引き継がれています。

漆喰の抗ウイルス性の実験グラフ 〜残存感染性ウイルス量〜

上のグラフは、オリジナル漆喰「光漆喰」と壁紙および珪藻土壁に新型コロナウイルス(COVID-19)のウイルス株が各種壁材に付着した後のウイルスの残存量を示しています。
グラフから分かるように、漆喰壁においては、付着後60秒でウイルス量が0%まで低下したことからも抗ウイルス性能が高いことが伺えます。

また、抗ウイルス性を1つの事例としてお伝えしたが、ウイルス以外にも臭いの原因であるアンモニアやカビ菌なども同様に壁が吸着をして分解することで、漆喰を使った部屋は湿度などの観点だけでなく、清浄な空気という観点でも快適な環境を作り、安心してくらせる家を作ってくれます。

漆喰の消臭効果のグラフ

漆喰のデメリット

漆喰には避けられないデメリットもあります。
たくさんのメリットがある漆喰ですが、もちろん良い点だけではなく、デメリットもあるので、以下のようなデメリットも認識した上で採用するかどうかの判断をしましょう。

ひび割れのおそれがある

漆喰のデメリットの1つ目は、「ひび割れ」が起こる可能性があるという点です。
これは、漆喰が固まるメカニズムと関係しています。
漆喰は、空気中の二酸化炭素と結びつくことで固まるのですが、壁の表面を薄い石灰石が覆っているのと同じような状況になります。
しかし、薄い石は柔軟性がなく割れやすいものです。
そのため、地震などの強い揺れを受けたり、外部に施工した場合には、雨風や天候の影響などでひび割れた発生してしまうケースがあります。

汚れがつくと目立ちやすい

漆喰を使った壁は、白色に仕上がります。
そのため、珈琲やお醤油などが壁に飛んでしまったなど、汚れがつくと目立ちやすいというデメリットもあります。
こういった場合には、目の細かい紙ヤスリで表面を削っていただくなどして汚れた部分を取り除いてもらうことで汚れ自体は除去することができます。(手垢などの汚れであれば、消しゴムを使うことで除去することも可能)
また、外壁に漆喰を使用した場合には、軒をつくり、壁内の風のとおり道をしっかりと確保しないと、壁面にカビや苔が発生してしまう可能性もあります。

手間と費用がかかる

漆喰を住宅に使う場合には、ひび割れなどのリスクを下げるために、下地処理など、一つひとつの工程を丁寧に行うため、壁紙の施工と比較すると工期や手間がかかり、一般的に費用が高くなる傾向があります。

実際に、普段漆喰を使っていない工務店やハウスメーカーで漆喰仕上げを依頼すると、家の大きさにもよりますが、材料費や左官職人さんの人件費(施工費)などで50万円〜70万円程度のオプションになることも珍しくありません。

職人の経験により仕上がりに差がでる

漆喰は、コテの抑え方や力の入れ方などの塗り方で壁の雰囲気が変わってくる建材です。

漆喰の施工事例はコチラ

また、扱いなれていない方が施工すると「ひび割れ」や「漆喰の剥がれ・浮き」などが起こりやすくなってしまうため、漆喰を塗りなれている左官職人さんや会社に依頼をすることが大前提として必要です。
そのため、前もって、自宅を担当する職人さんが実際に施工した漆喰壁を見せてもらうなど、自分の目で確認できる機会をもらうことが大切です。

漆喰と珪藻土の違い

近年、健康志向の方増えてきて、塗り壁素材の二大巨頭のようになってきた「漆喰」と「珪藻土」。
手袋やスポンジ、ローラーを用いての施工も可能なため、DIYで採用する方も増えてきた2つの素材ですが、どのような違いがあるのでしょうか。
ここでは「漆喰」と「珪藻土」の違いの中でも最も大きい、原材料の違いについてご紹介します。

漆喰の原材料は消石灰が主成分であるのに対し、珪藻土は「珪藻(藻の一種)」の遺骸が海や湖の底に積み重なってできた粘土状の土が原材料になっています。
そんな原材料の差から、「自ら固まる素材かどうか」という点で違いが生じます。
漆喰の主成分である消石灰は、空気中の二酸化炭素と結合することで徐々に固くなっていき、石灰岩に戻っていきますので、付加物をいれずとも壁材として使用することができます。
しかし、珪藻土には自ら固まる性能(自硬性)がないため、壁材として使用するためには、セメントや石膏、合成樹脂(接着剤)などの凝固剤を混ぜる必要があります。
そのため、自然素材で内装を仕上げたいと思っても、メーカーによっては珪藻土に化学物質を含んだ素材を混ぜて固まるようにしていることもあるので、珪藻土を採用する際にはメーカーが何を素材にいれているのかチェックを忘れずにしてください。
自然素材へのこだわりがあり、年間を通して快適な湿度を保ちやすくしてくれる調湿性だけでなく抗菌・抗ウイルス性能や耐火性、壁に触れたときにボロボロと落ちてこないなど、総合性能で判断すると、オールラウンダーな漆喰のほうが優れています。
しかし、調湿性という1点だけを重視される方にはスペシャリストタイプの珪藻土が向いていると思いますので、是非ご自身たちが何を重視したいのかで選び分けるのがよいと思います。

漆喰を採用する際のポイント

ここまで漆喰の歴史やメリット・デメリット、珪藻土との違いなどについて解説いたしました。
漆喰や珪藻土などの自然素材は、調湿性があるが故に、下地材や断熱材との組み合わせも大切になってくる素材です。
そのため、漆喰という素材にだけ着目するのではなく、漆喰の特徴をよく理解してくれている会社・職人なのか、施工する企業・人にも着目して自宅に取り入れてみてくださいね。

漆喰壁や無垢材など、自然素材での家づくりに興味がある方は是非、秋山住研にご相談ください。

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